「今日は昼から暇になったけん、今から行くけんね!店におってよ!ガチャッ」
電話の主は、僕がこの業界関係者で尊敬するオバチャンのひとり。おとなり福岡市内にお住まいで長らくきもの業界で大活躍されていたオバチャンは、ある時を境に潔くこの道から引退されてからも僕たち夫婦や池田屋呉服店のことをいつも気にかけてくださっているんです。そうして御来店一番、いつものようにクルッと曲げた右手の人差し指でメガネを押し上げて「みんな!元気にしとんしゃったね!」とおっしゃったかと思えば風呂敷包みを広げて「はい、これ」と女将に生紬と塵避けコート、僕には写真のお洒落過ぎる大島紬。「これはね、うちの主人に誂えてあげたんだけど、着なくなったから私の寸法に仕立て直してたのよ。洗い張りをしてあなたのきものに仕立て替えてから着てください」って毎度あっさりと。以前も御主人様の能登上布を頂いたのですが、いずれも僕好みってのが見透かされていて流石としか申し上げようがありません。しかもこの大島紬はそんじょそこいらのものとは訳が違います。
「こんなのね、家の箪笥の中に眠らせてても何の意味もな、い、と。売っても二束三文よ。それならあなたたち夫婦みたいに毎日着てくれる人に、大切に着てくれる人に着てもらった方がきものも喜ぶし私も嬉しいとよ。気持ちよくもらってね」には毎度完敗(涙)。ひとまず僕ら自慢のツルヤのカステラを差し上げましたが、オバチャンの想いに応えるためにもこの大島紬に袖を通して益々商売繁盛といきたいところ。いやたまに袖を通す一張羅かな。
にしてもお洒落過ぎます。まじまんじー!!!