ちょうど60年前に、

 今日は朝から雨でしたが、成人式の前撮りを予定通り決行されるお姫様の着付で幕を開けました。
 次第に雨は上がり、七五三や唐津くんちなど唐津の秋を迎える準備に余念のないお客様のご来店が続きました。そうしてようやくひと息ついた頃、「ごめんくださ〜い、」と久留米絣のエプロン姿がおしゃれなおばちゃんが伊勢木綿の暖簾をくぐって来られました。僕も、横にいた母もきっと?マークが頭に浮かんだに違いありません。すると、「実は私、今からちょうど60年前にこちらでお世話になっていたものです。まだお父様が大学生の頃でしたから、先代やあなたのお爺ちゃんとお婆ちゃんには本当に良くしてもらいました。当時私は18歳で母を亡くして初盆を終えたばかり、遺影を抱えたままこちらに住み込みでお世話になりました。いろいろとあって2年とちょっと失礼しましたが、成人式の衣装まで誂えてもらいました。その御恩を忘れることはなかったのですが、その後は結婚して子育てや生きていくので精一杯だったので挨拶に伺うどころじゃありませんでした。いま80歳になって人生を振り返った時に、やっぱりあの時のことが忘れられなくって唐津に来た時には必ず池田屋さんに寄ろうと思っていました」とお線香を三つ。2代目の祖父と祖母、3代目の中里、まだ生きてますけど4代目の父に。
 僕が生まれる前のことで見ず知らずのおばちゃんでしたけど、なんだか嬉しくってジーンと来てしまいました。

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