僕は3年ぶり、女将は初めての染織工房を巡る旅路。
3月に沖縄を訪ねました。最初に伺ったのは城間びんがた工房。知念家、沢岻(たくし)家とともに紅型三宗家として琉球王国時代から首里城の王府御用を務め、300余年の歴史を紡いできた正統派の紅型工房。10数年前に15代栄順氏から工房を受け継がれた16代栄市さんが迎えてくださいました。
「ものづくりを通して琉球の思いを守る」想いを胸に。
紅型と呼ばれるようになったのは明治以降とされていて、それまでは型染めの型を付けるという沖縄の方言で「カタチキ」と呼ばれていました。紅型の紅は独特の「赤」を指すのかと思いきや、琉球では「色の総称」として捉えられていて、色(顔料)で型染めすることから紅型と呼ばれるようになったとか。
図案、型紙づくり、道具づくり、染めなど一貫して行われている工程や作品を拝見しながら栄市さんとお話ししていて最も印象的だったのは、道具、意匠、色遣い、工程に至るまで古来から受け継いだ紅型を守り抜くことへの決意。新たな試みの中にも王道を踏み外さない芯の強さを感じました。新たに現れる紅型作家の方々の作品が新鮮に見えるのも正統派が守り続けている道があるからこそ、と納得。作品群の中から選び抜いた帯を中心に染め出しを依頼し、8月末に全て揃いました!この続きは10月に開催する企画展『〜紅型と花織が魅せる〜琉球染織の美』に御来場頂いた折に作品をご覧に入れながら。

色遣いの魔術師・野原俊雄さんが主宰する花織の工房
続いて伺ったのは南風原にある花織で有名な野原織物工房。3年ぶりに再会した主の野原俊雄さんは相変わらず方言が強くて。伺う前に女将には話していたので覚悟の上でしたが、おかげさまで説明にはいつも以上に真剣に耳を傾けていました笑。花織のほかティーバナ織や絣など駆使して柄を表現されるのですが、私が好んでやまないのが魔術師と賞する色遣い。淡い色にも濃い色にもため息が出るほど素敵なんです。
だからこそ、京都の問屋が仕入れたものを京都で買うよりも、工房を訪ねて織られている作品を拝見したその場で予約注文することに価値があるのです。

見事な機さばきで織り出す花織と刺繍のように結ぶティーバナ織
さっそく所狭しと並ぶ機を使って八寸帯、九寸帯、夏織物、珍しく男物などをおられている様子をまじまじと。沖縄の人々からすると当然のことなのでしょうが、工房内に所狭しと並んでいるのは自動織機ではなくすべてが手機というものづくりに天晴れをあげて下さい。加えて織り子のみなさんが若いのにもうひとつ!本当に若くて明るい未来を感じます。
そうして機に掛かっているのが他店の注文品じゃないことを確認した上で、いかにも野原さん!という帯を淡いのと濃いのひとつずつ、これまで見たことのなかった色遣いのをひと目惚れでもうひとつ。あの日、沖縄・南風原で女将と感嘆した作品たちは程なく織り上がり、唐津で手にした喜びは一入。みなさんにお見せするのを我慢に我慢を重ねて隠し持っていますから笑。


沖縄に息づく色を重ねる、工房「真南風(まふえ)」の手仕事
最終日の朝一番に訪れたのは、那覇市内から車を約1時間ほど走らせて辿り着いた読谷村の高台にある工房「真南風」。到着してまず心奪われたのが眼下に広がる海と空。と、木の香り。沖縄に息づく木々を主な原料として染料を煮出し、糸を染められていました。その木々が持つ力は色となり、さらに色を重ねてふたつとない色を創り出すというのです。曰く「色は無限。その日のメモをとっても草木で同じ色を出すのが不可能。まだ見ぬ色を求め続けています。帯を織るために色を生むのではなく、染め上がった色を選んで帯を織るのです」とは天晴れ3つ。いや無限。


織り手は個人事業主。織ってはたのし、新たな働き方をもとめて。
2階にある機場に上がると数ある機は織り手で埋め尽くされていました。こんなにたくさんの人を雇って大変だなぁと余計なことを考えていると、「うちはですね、織り上がった分だけの成功報酬型なんです。ある程度の注文はしますが織りたいものをそれぞれのペースに合わせて無理なく織ってもらっています。しかもお互いがすごく協力的なんです」とは営業担当者。すると突然みなさんの手が一斉に止まり砂利を敷き詰めた一階に総仕上げだヨ!全員集合!
たくさんいらしたうちのお二人が織り上がったらしく、帯をかける器具を準備する人、帯を引っ掛ける人、伸子で張る人、と手際よく総仕上げの準備が始まりました。すると最後に現れた人がホースの先を引っ張って来て、まさか!と思いましたがジャーっと水をかけてみんなでゴシゴシ水洗い。糸の天日干しも水洗いも工房の方にするとあたり前田のクラッカーですが、僕にとっては恐れ入谷の鬼子母神でした汗。
企画展『〜紅型と花織が魅せる〜琉球染織の美』でお会いしましょう!
手に入れましたとも!数は少ない織り上がった作品の中からいかにも真南風!って帯たちを。10月の展示会当日を乞うご期待下さい!
10月の企画展『〜紅型と花織が魅せる〜琉球染織の美』
詳細はこちら→ https://kimono365.jp/?page_id=18695

《番外編》芭蕉布を求めてはじめての大宜味村へ
はるばる沖縄本島までやって来て、那覇市から1時間も車を走らせてるんですからで向かわないわけにはいきません!さらに車を走らせること1時間半、女将はもちろん僕も訪れたことのない世界に誇る織物を一目見ようと大宜味村立芭蕉布会館へ。残念ながらというか当然のことながら作業風景の写真を撮ることは叶いませんでしたが、当日は芭蕉から糸になる繊維を取り出す「芋引き(うーびき)」の作業が行われていました。少し遠目からではありましたが、とても貴重な経験をすることができました。芭蕉から糸を績み、さらに柄を織り出して布をつくるなんて考えた先人たちには感謝しかありません。

必ずやります!琉球染織工房ツアーをお楽しみに!
工房「真南風」を後にして芭蕉布会館へと向かう途中にお昼ごはんで立ち寄った『番所亭』の沖縄そばは安くて美味すぎました。今回は行けなかったタコスの名店「メキシコ」など、工房巡りとともに案内したい店がたくさんありすぎる沖縄。
お客様と行く!琉球染織工房ツアーに乞うご期待ください!


