「日本男児なら、正月のご挨拶まわりは紋付羽織に白扇(白い扇子)を持って伺うこと然るべし。まして呉服屋なら尚更のこと」とは、とある呉服屋の旦那さん。「たしかにそうだなぁ、一丁上等の白扇を誂えてみるか」なんてパソコンの画面越しに頷いたのが新春早々。
そんな本日、男物黒紋付羽織のお誂えのご注文を承りました。「私が元気なうちに、三人いる孫たちに黒紋付のきものと羽織を誂えて上げておこうと思ってね。きものは主人が着ていたものを洗い張りをして仕立て直し、羽織は白生地から誂えます。と言っても三人で一枚ですけどね。表地はもちろん裏生地も上等なのをお願いします」と、羽織は羽二重の白生地の中でも目方の重たい上等に五つの家紋を染め抜いて、裏地には超獣たちが横に並んで戯れているちょいと珍しい手描きの画を。
おばあちゃんの想いを立派に成長されたお孫さんたちに届ける、それが僕たちの役回り。というのが嬉しくて。