泣いて振袖を斬る。

 「振袖の袖を切って短くして欲しいんですけど、」とご相談の電話。
 毎度ながら「振袖用に染められたきものですから、できれば袖は短くせずに次の世代のために大切にとっておくことをおすすめします」という提案を準備して、いざ御来店。拝見してビックリ!というか、、、こんなに素晴らしい振袖の袖を断つなんてモッタイナーーーーイ!!!と叫ぶ間もなく、「いや、この振袖は私が二十歳の頃に着ていたもので、娘も30歳を過ぎたことですし、袖を短くして親戚の結婚式で着せようと思って」と石のように固い意志。長襦袢も白地に絞りで雲の模様が染められた、振袖に一歩も引けを取らない素晴らしい一枚。もう一枚の色無地紋付は、「長襦袢を誂えてお嫁さんに着せてあげようと思って、」と。
 ということで涙を飲んで振袖の袖を切って短くすることになりましたので、「せっかくなら、」と洗い張りをしてきれいさっぱり、寸法もお嬢様とお嫁さんそれぞれに合わせて仕立て直すことに。納得いかず最後まで残念がる僕に「孫には新しい振袖を誂えますから」とひと言。
 泣いたカラスがもう笑ろた。えへっ、

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