羽二重の白生地。

 唐津っ子なら一度は耳にしたことのある名前かも知れません。
 羽二重[はぶたえ]とは、日本を代表する高級絹織物の一種で、その工程から名付けられたと言われています。撚りの少ない生糸で緯糸[ぬきいと/よこいと]を濡らして打ち込むため地の目が詰まって織られるため、独特の肌触りの良さと光沢が特徴です。主に男物の黒紋付に用いられ、滑りがいいことから薄手に織って裏地などにも用いられます。
 が、ここ唐津では唐津神社の秋季例大祭である唐津くんちの曳き子たちの装束に、この羽二重が用いられることが少なくありません。町火消しに始まった装束がいつ何がきっかけで高級絹織物に変わっていったのか、大変興味深いところです。かく言うわが町もこの羽二重に黒で背中に町名の「刀」の文字、腰回りには紗綾形を染めています。時折目方が変わったりしたみたいですが、長らく羽二重を用いてきました。
 が、ががが!この羽二重のほとんどを織っていた新潟県は五泉市にあった6軒の機屋さんのうち、昨年末に最大手が1軒、その後を追うようにもう2軒が廃業されることになってしまったのです。今年も装束の御注文を頂けそうだったので白生地を数反抑えていたからよかったものの、来年度以降は全くもって白紙のような悲しい状況となってしまいました。
 写真ではなかなか表現できませんが、ご覧ください!この光沢!こんなのを贅沢に素肌の上から羽織って、しかも汗をかきながら街を練り歩くのですから唐津っ子は大したものです。非力なため一年に数反しか仕入れることができませんが、来年度以降も品数もお値段も安定して供給頂けることを祈るのみ。そういえば唐津くんちの曳山を奉納する14ヵ町のうち、羽二重と胸を張って言える生地を使っているのは8ヵ町ほどになってしまいました。
 産地を守るのも僕らの役回り。精進あるのみ。

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