涙のラストレッスン。

 「姉の結婚式に出席するために自分で着れるようになりたい!」
 そう一念発起されたのはほんの数ヶ月前。蝉が鳴き始めた頃でした。一ヶ月に数回、子育てとお仕事の合間をぬって熱心に着付のお稽古を続けられました。唐津くんちのお囃子が聞こえ始めた頃「結婚式には亡き母が私たちのお宮詣りで着ていた訪問着を着たい!」と思い立たれてシミ抜きへ。四姉妹でお金を出し合って、お母様の形見を綺麗にしました。冬が過ぎ、早咲きの桜が咲く今日、いよいよラストレッスン!これまでの練習の成果を確認した2時間。「きちんと着れるかな?」「絶対大丈夫!」と背中を押して送り出しました。毎回のお稽古で一つ一つ重ねた言葉がこんなに心に残るなんて。病床にありながらも大好きな着物のことを最期まで心配なさっていたというお母様。その姿を想う涙は胸の中。
 「きものを着てくれてありがとう」

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