四十年前に買ってもらった草履。

四十年前に買ってもらった草履

 「もう、痛くて痛くて。こんなに我慢して履くものだろうか」
 先日お亡くなりになったお母様のお通夜と葬儀で黒紋付をお召しになったお客様が、お手入れと共に「かれこれ40年くらい前に私が嫁ぐ時に母が黒紋付といっしょに誂えてくれた草履ですから、履かないわけにはいかなくって」と持ち込まれました。唐草紋様が織られたビロードの素敵な草履ですが、たしかにお客様の足にはとても似つかわしくない鼻緒の挿げ具合だということがひと目で判りました。さっそく鼻緒を緩めるために裏を開けてみると、鼻緒を挿げるのに最も大切な麻紐が経年劣化で切れそうだったのですが、何とか挿げ直すことができました。近くご来店時に履いてみてもらって再調整後に本挿げの予定。
 黒紋付はお嫁入り道具のひとつとして現在も誂えられる方が少なくないのですが、弊社では必ず帯〆帯揚や草履それからバッグなどすぐに手配できるものは必要な時に改めて誂えられることをおすすめしています。すでにお分かりかと思いますが、特に草履は何年も履かないと経年劣化で鼻緒が切れやすかったり接着している台が割れたりするからです。今回のお客様のお草履は驚くほど痛みは少なかったのですが、先日の通り麻紐が切れやすくなっていました。当然のことながら40年前とでは足のサイズも異なる恐れがあります。そもそもいつ履くかわからない履き物をお求めになること自体に無理がありますよね。けど黒紋付も帯も草履も、誂えてくださったお母様はきっとお喜びになっていらっしゃることでしょうね。
 みなさまもお手元にある草履を一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。黒共だけじゃなく御祝儀や普段にお召しになる草履や下駄まで。

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