「初個展です。20年かかった」

 大学時代の友人から届いた一枚のDM。相変わらず軽々しく筆を走らせていた短い言葉には、滲み出た重みを実感しました。
 順天堂大学スポーツ健康科学部スポーツマネジメント学科に在籍していた大学の同級生が、20年の時を経て初めての個展を銀座三越で開催します!当時はチャラチャラした男だなーと思っていたのですが、バスケットボール部以外で現在も付き合いがある数少ない友人で、卒業後に再会するとなななんと!掻きもできる漆芸家になっていたのです。『荻房』という荻窪で工房を主宰される父上の後を追って。
 意外にも純国産のが2〜3%という漆難民のこの時代に、手掛ける漆はすべて自分の手で掻いたもの。しかもその漆を掻く樹々の生い茂る漆畑は、20年ほど前から父上が茨城県に開拓された山という、まさに純国産はおろか筋金入りの本間産。漆の樹は10年かかってようやく漆が掻けるほどに成長します。一本の樹から牛乳瓶一本(約200ml)ほどの漆が採れるらしいのですが、一度漆を掻いた樹は伐採するのだそうです。つまり最低10箇所は漆畑を持っていないといけないことになりますからさぁ大変。さらに驚くべきは、唐津くんち曳山のうち、近年小西美術工藝社の手によって総修復された2台の仕上げに使われた純国産の漆は、まさかの本間産。そう言えば、近所の有名すし店「つく田」さんで使われていた醤油差しは『荻房』のものでした。ちなみに、彼は数年前に執り行われた伊勢神宮の式年遷宮の際に、若手漆芸家を代表して鏡を仕舞う箱を製作しました。ちなみのちなみに、弊社でも三度ほど『荻房』の個展を開催しました。
 そんな彼の初めての個展に足を運ぶことができないのは残念ですが、この場を借りて告知いたします。


本間健司漆芸展』
会期:12月5日(水)〜11日(火)
会場:銀座三越7階ギャラリー
(全日程13:00〜17:00在廊)


 木地を削り、漆をかき、何度も塗り重ねることで生まれる彼の作品は、すべての工程を彼自身の手で手掛けています。素材と向き合い、積み上げた経験と技が創り出す独自の意匠もお楽しみください。お近くの方、お時間のある方、大学時代に下手クソな僕と本間をあたたかく迎え入れて試合に出してくださった敏腕マネージャーの永井先輩、今をときめく大先輩の鈴木大地スポーツ庁長官、是非とも彼の作品を御高覧下さい。

追伸
「その木が過ごしてきた時間と情景を作品から感じていただければ、、、」なんてどの口が言ってやがんでぇ(涙)

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