箪笥の中に眠り続けていた髭紬の、しかも両方ともきものと羽織ができる長さのアンサンブル。
近頃はあまり目にしなくなった髭紬。表に織り出された無数の糸がまるで髭のように見えることからそう呼ばれていて、ひと昔前は男性用の紬の代名詞でした。今回お預かりしたのは、そのひと昔前から箪笥の中に眠り続けていたもの。どなたに仕立てられるつもりでお求めになっていたのか不明なのですが、「息子(と言っても60歳くらい)に仕立ててあげようかしら、」と突然にひと昔のことを思い出されてのこと。アンサンブルですからきものと羽織が同じ生地で仕立て上げるのが筋ですが、下の鉄色をきものに、上の茶色を羽織に仕立ててお召しになると格好良いかと。あの髭と恰幅の良さなら。
残る長襦袢と肩裏選びは僕の腕の見せ所。