梅雨の京都出張最終日。

 振替店休日だった昨日は汗を流したので、今日は振替で少しゆっくりとした1日を。
 とは言え、ご要望を頂いていた単衣や盛夏向けの帯を探しに帯の紫絋さんへ。こちらはとってもひょんな御縁から取引のはじまった西陣の老舗。御縁を頂いてから数年が経ちますが、展示会には何度も足を運びながら意外にも会社を訪ねるのは初めてで、作品はもちろん意匠や機場も見学することができました。あぁ、嫁いでくれると良いなぁ、あの帯。
 そしていよいよ念願叶い、若い数寄者たちがシェアしているという噂の陶々舎へ、ちょっと背伸びをして川端道喜の水仙ちまきを手土産に。今日は特に月釜やイベントが催されている訳でもなかったのですが、ひょんな御縁をつないでくださったひょんな御縁の紫絋さんにお願いをして開けてもらうことに。大徳寺の敷地内にある閑静な住宅街にあるのですが、縁側越しにいっぱいの緑を眺めつつも、すぐそばにある紫野高校の元気な声が響いていて、それがまた日常と非日常を行き来させてくれて心地良く。床に一礼し、自ら好みの量の抹茶を茶碗に入れて席で待つと、持ち上げた茶碗に亭主が飯茶釜にかかっていた中東生まれの銀瓶で湯を注ぎ茶を点ててくれるというまさに一期一会の共同作業(笑)。お互いを尊敬し合えばすべてうまくいく、お茶も商いも同じこと。今回もまた新たに良いご縁を頂きました。

一度訪ねてみたかった陶々舎
 つづいて京都市内を離れ、八幡市にある松花堂庭園へ。ここは江戸時代初期に石清水八幡宮内にあった滝本坊というお寺の僧侶で、書画に優れ茶の湯を愛し文化人として活躍をした松花堂昭乗が建てた茶室や書院を移築した庭園。敷地内に4棟もある茶室のうち、もっとも興味深かったのが二帖間の草庵茶室『松花堂』。中には持仏堂と床、その下には丸い炉を備えた袋棚、小さな土間には竃もありました。これは「水を運び、薪をとり、湯を沸かし、茶を点てて、仏に供えて人に施し、吾も呑む」という茶の湯の原点を踏まえたものと言われ、まさに無駄を削ぎ落とした究極の茶室。きっとここにあったのは、相手を尊敬してもてなす心。流派や世代よって変わっていくお点前や作法なんてのは、商売がらみで毎年新たに生まれる戦隊ヒーローみたいなもの。まぁそれを好むか好まざるかはひとそれぞれ。これからも普遍的なもの、自分らしさという相反する二つを追求していきたいものです。
 と、改めて実感した梅雨の京都出張は満足のうちに幕を下ろしました。

追伸
松花堂弁当とは、昭乗が好んだ四ツ切箱が器はもちろん名前の由来となっているそうです。
 

昭乗が隠棲していた草庵『松花堂』

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