想ひ出の一ツ身。

 秋雨の降りしきる閉店間際に、お嬢様のお宮詣りのきものを大切に抱えて持ち込まれたお母様。
 風呂敷包みを広げると、30数年前に弊社でお買い上げ頂いた一枚。3歳の七五三詣りでお召しになる時に裄や身丈を縫い上げたまま、とどのつまりお嬢様のその頃をまったく存じ上げない僕までも3歳の想ひ出が蘇って来そうな姿でした。赤や白やピンクなど、可愛らしい色ばっかりを目にする今日この頃からすると、色も柄も斬新。それでいて古臭さを微塵も感じさせません。残念ながら、至る所にカビるんるんと黄変があってまずは丸洗い、その後は相当の費用を要する(見積もりをご了承後に)黄変直しの旅へと向かうことでしょう。ですが近い将来、お嬢様にお孫さんが誕生された折にはお宮詣りや七五三詣りで是非とも着せて欲しい!と切なる願い。は僕が抱かなくとも、わざわざ雨の中を持ち込まれたお母様のお気持ちを察するところ。
  「このきものを着せた頃は可愛かったのよ」とか何とかおっしゃって、お帰り際には「紬や小紋を着た時に履く草履を買ってあげよっかなーと思ってます」と今も可愛くてしょうがない気持ちをポロリ。

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