胴裏黄変のひみつ。

弟さんの結婚式でお召しになる、一見きれいな訪問着。

 振袖訪問着お手入れのご相談で御来店。
 振袖丸洗いシミ抜きの見積もりで即決、「実はこちらがお見せするのも恥ずかしいくらいの一枚なんです」と続いて畳紙から現れた訪問着が本日の主役。一見、やや古い訪問着でシミでもあるのかなぁと触り始めてすぐに、桜色の裏側から透けて見える無数の怪しい影に気付きました。表地にも汚れやシミがありましたが気にならないほど、ですがこの胴裏黄変というか茶色い変色はシミ抜きでは処理できない状態。
 そもそも胴裏の変色には3種類の可能性があります。

胴裏が激しく変色してしまった訪問着
胴裏が激しく変色してしまった訪問着。
 

 1つ目は、うっすらと全体的に黄ばんでいる状態。もともと真っ白ではない絹は、精錬という加工を経て人工的に白くしています。これが酸化など時間の経過とともに生成色にもどっているのです。今回の場合はこれではありません。
 2つ目は、斑点のような黄変が所々に発生している状態。これは湿気など様々な原因でカビが発生し、さらに時間の経過とともに変色した可能性が非常に高いです。なので丸洗いなどで変色が薄くなったとしてもカビ菌が潜んでいる可能性がありますし、表地にカビ菌が繁殖するなど悪影響を及ぼすので要注意です。今回の場合はカビ独特の匂いがないので、これでもなさそうです。
 3つ目は、全体的に茶色く変色している状態。これはその昔、胴裏地に特殊な薬品(糊の一種)を用いていて、それが酸化により激しく変色を起こしているのです。さらにその薬品がカビの栄養源ともなって、より変色がひどい状態になります。

背縫いなど折り畳んだ端っこが特に激しく変色。
背縫いなど折り畳んだ端っこが特に激しく変色。

 今回の訪問着の場合は、まさに3つ目の状態の可能性が高いと考えています。
 ということで丸洗いやシミ抜きではなく、洗い張りをして胴裏地を新しいものと交換することに。現代の新しい胴裏生地は、技術が進歩したおかげで長期間にわたって高温多湿な場所など劣悪な環境に保管したりしない限りはほとんど黄変することがありませんのでご安心下さい。そのほか帯選びや、それに合わせて重ね衿、帯〆、帯揚、着付小物などをお買い上げ頂きました。11月22日(いい夫婦の日)に予定されている御家族様の結婚式でお召しになるので、これから時間をかけて間に合うように仕立て上げます。
 なにはさておき、お召しになりたい方にお召しになれるように提案ができて一件落着。嬉しい。

◉◉◉唐津はきもん祭り-令和二年秋篇-◉◉◉
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10月のきもの成績
若女将3vs4若旦那
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◉9月/27vs26
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△8月/27vs27
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△7月/29vs29
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○6月/27vs28
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△5月/26vs26
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○4月/27vs28
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△3月/29vs29
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◉2月/27vs26
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◉1月/27vs11
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