織物の変色。

 もはや致命的とも言える変色です。
 数十年前に百貨店でご購入された紬の中の紬、糸づくりから織り上がるまでの工程が無形文化遺産として登録された日本が世界に誇る本場結城紬。霞のように織られた中に、等間隔で向かい合う鳳凰が(織物としては技術の高い)丸い柄にで織られています。とは、柄をなす部分だけ色を付けたり付かなかったりした糸を設計図通りに柄を織りだしていく技法です。これが写真の紬のように縦糸と横糸を合わせながらのになると大変高い技術が求められる上に、さらに丸い柄が飛び飛び現れるのですから尚更のこと。
 な、な、なのですが、「その昔、相当な値段で購入した一張羅を娘に譲ろうと思って箪笥から出してみたら、、、なんとかなりませんか」とお預かりした時にはすでに遅し。一抹の望みを託して悉皆屋さんに送ってはみたものの、やはり「修正不可」とのお返事。これだけ濃い変色が絣の上に、さらには全体にあるのですから。そこで弊社ができる提案は2つ。1つはそのまま変色を柄と思ってお召しになる、もう1つは柄が見えなくなって無地っぽくなることを覚悟の上でシミが見えなくなるほど濃い色に染め替える。しかありません。もちろん、それはこのきものをお召しになりたい!という強い意志がねければなりませんが。
 けど何度触っても心地が良いんです、軽くて暖かい本場結城紬って。

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