近江ちぢみに触れて、

 どんなに蒸し暑い日でもその方は涼やかに現れます。
 開店早々にお客様宅のタンスの整理に伺って息つく間もなかった僕も、和裁士さんとお仕立てについて話し合って頭が煮えきっていた若女将も、その笑顔で心に風が吹き抜けました。しかも垂涎のお土産まで。でへっ、
 さて。次のご来店時には、ご主人様のお誕生日に合わせて誂えられた浴衣となごや帯の着心地やご主人様のご感想を伺おうと楽しいにしていたのですが、なななんと!そんな晴れ舞台に台風がやって来てお召しになれなかったという悲しいニュースから幕を開けました。そんな中、先日お父様用にお買い上げ頂いた久留米絣のもんぺがたいそうお気に召したご様子で「これがあと3枚あったらこの夏は越せるな」という嬉しいニュースが続き、夏の反物を色々とご覧に入れながら「秋の唐津くんちには是非ともご主人様とお出かけくださいね」などとお話ししていると、ふと手に触れた。最初にお見せした近江の。「うわー、気持ちいいんですねー」とその手触りにイチコロ。「主人ならきっと明るめのこちらを勧めると思うんですけど、」と片貝の綿麻(白緑色の格子)に傾かれつつも、無地のような細い縞にも頷かれて。独特のしぼが肌触りをより一層ね。それもそのはず、お客様が触られたのは僕の一押し、泣く子も黙る近江ちぢみだったのです。「これにします」と丁寧に仰るものですから、こちらも「よろしくお願いします」と妙に改まって頭を下げたのでした。
 この夏のうちに何度も袖を通していただけるように、早速水通し!お盆明けには納めるぞー!おー!

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