絹は湿った状態のままで、あるいは湿った布で拭いてしまうと繊維が毛羽立って白けてしまいます。これを『擦れ』と言い、修正には薬品を用いて毛羽立ちを寝かせてから色掛け修正をしますが、修正料金がかかるうえに毛羽立ちを完全には直すことができません。
「またしばらくは着ないから、」と本日お持ち込みの黒留袖(比翼付)は、丸洗いとシミ抜きでお預かりしました。「脱いだ後に袖口付近にシミを見つけたのでお湯で湿らせた布で拭き取ったのですが、白くなってしまって」とは、まさに『擦れ』。判りやすいように丸で囲みましたが、ご覧の通り白けてしまっています。どのくらい修正できるかわかりませんが、見た目には判らないくらいまで直せるよう祈りを込めて職人の手に委ねます。
万が一液体をこぼした時には、乾いたきれいな布で軽く押さえる様にして水分を吸い取るまでで我慢してください。水やお湯で濡らした布で拭くなんて、絶対にやってはいけないことです(泣)。