丹後と篠山への旅路。

 大阪を発って3時間とちょっと。丹後ちりめんの故郷へ降り立ちました。
 講師を依頼したのは、織元ワタマサの社長に就任されて一年足らずの渡邉正輝さん。まずは丹後ちりめん協同組合が運営されている精錬工場へ。精錬とは織り上がった白生地の不純物などを取り除き、絹本来の光沢と柔らかさを生み出すためには欠かせない大切な工程。それだけでなく精錬によって歪んだり縮んだ生地の修正はもちろん、真っさらな白生地として出荷できるか厳正な検品作業が行われていました。続いてワタマサさんに移動して糸の準備工程、撚りをかける工程、織機による製織工程などを社長のわかりやすい解説付きで見学。中でも一番驚いたのは、織機にかけられて途切れてしまった縦糸を次の縦糸とつなぐ職人技を見せてくださった、というかあまりの早業すぎて糸を目で捉えることができなかったベテランビューティーペアの手つき(動画を参照)。はっはーん、勉強していたつもりでしたが様々な工程や現実を目の当たりにして、白生地が手元に届くまでにこんなにも手間がかかっているのかと改めて実感しました。糸から織り上がるまでも然ることながら、精錬や検品にかかる手間と設備のすごいのなんのって。詳しくは来月はじめに白生地をたくさん用意してお待ちしておりますので、どうぞお楽しみに。

きものを支え続けているブラジル産の生糸


 と、丹後を発って2時間。第二の故郷、兵庫県は篠山市へ。何度も紹介していますが、家業を継ぐべく商いの勉強をさせてもらった三國屋呉服店のある町。現在の僕があるのは、温厚で聡明な社長をはじめ家族のように可愛がってくださった先輩方のおかげさまです。中でも3年ほど前に退職された元常務には、商いの礎を築く上で数えきれない多くのことを教えて頂いたり、いつもいつも励まし続けてもらいました。修業を終えて帰郷した後もずっと気にかけてもらって、季節ごとに送ってくる自慢の農作物たちは僕の励みでした。昨年四月に篠山を訪れた折に数年ぶりにお会いして、桜咲き誇る篠山城址周辺を散歩しながら近況報告をしたのが記憶に新しいところです。が、僕の知らぬ間に元常務の身体を病魔が襲っていたらしく、お客様のためにご家族のためにと誰よりも努力されていたあの丈夫な心と体をもってしても跳ね返すことはできず、短すぎる天寿を全うされました。1日も早く商売繁盛の知らせとともに元常務夫妻を唐津に招待するのが僕の目標だったのですが、叶えられなかった努力不足を後悔するばかりです。ということで10日遅れの近況報告と、安らかに眠る間もなく僕たちのことを見守り続けてくれますように!と仏前に手を合わせました。帰りには修業時代に毎日のように押しかけていた先輩宅で夕飯をご馳走になって篠山をあとに。
 唐津から大阪経由で丹後、折り返して篠山、そして京都という長旅の一日。生産数が減ったとは言え、美しすぎる白生地を年間30万反も送り出してくれる丹後ちりめん協同組合のみなさまのたゆまぬ努力、志半ばで旅立たれた元常務のお気持ちを思うと、移動の疲れなんて言ってられない。
 さ、明日は京都恒例の弾丸問屋ツアーだ!

御召ちりめん×紗羽織×おろしたてのスニーカー

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