旧大島邸上棟式。

 近代唐津の礎を築いた大島小太郎氏の旧宅がいよいよ最後の棟上げ。
 老朽化や白蟻の被害で傷み、復元には莫大な予算がかかることなどから取り壊しが決まっていた旧大島邸。保存への声を上げた小さな市民運動はやがて市長の影へと忍び寄り、紆余曲折の末に市長自らが逆転満塁場外ホームランを放ってしまった。総事業費はなななんと!10億7500万円!その内訳は、土地取得6億5600万円、建物の復元2億3800万円、日本庭園整備1億800万円など。移築復元にあたっては調査団の団長として多大なる御尽力をされながら、志半ばで逝去された元日本建築士学会会長で神奈川大学名誉教授の西和夫先生がおっしゃっていた「どんなに貴重な評価の高い文化財でも、住民が保全し、活用しようと思わなければ文化財は保存も価値もない」という言葉が忘れられない。それなのに残念ながら、完成後にどう活用していくか明確なビジョンは今も見えず、保存で盛り上がった市民の関心も薄れがち。
 そんな中での本日の棟上げ。向かって左側の破魔矢は北から南を上向きに指して弥栄を、右側のは南から下向きに指して厄除けを。五色の吹き流しは五行説に基づく宇宙間の森羅万象を表す五元素。四方の守り神に敬意を表しているとも。てっぺんには神様の依り代である御幣、そして末広。二匹の鯛もぶら下がっていた。式典後、近くの小学校の子供たちが先日ついたばかりの餅が盛大に撒かれ、園児や関係者など多くの市民に福をもたらしていた。兎にも角にも移築復元が決まったからには経済的はもとより教育的にも唐津市民に利益をもたらす施設に、声を上げた唐津市民がなんとしてでも活用していく義務がある。
 古式ゆかしき本日の上棟式が、参加した園児たちの心に刻まれていることをまずは祈りたい。

追伸
そうそう、吹き流し用の布は弊社でお買い上げ頂いたもの。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください